・脳梗塞と脳血管性認知症の症状ってなに?
・人によって症状が違いすぎてわからない・・・
・ケアするときのポイントとコツが知りたい!
脳梗塞・脳血管性認知症の症状は人によりさまざまです。脳の損傷部位により変わる症状と、その人の個性や環境による影響が複雑に絡むためです。そのため、日々のケアに混乱することも多いのではないでしょうか?
私は医療従事者として15年間勤務し、脳梗塞・脳血管性認知症を持つ利用者さんをたくさん見てきました。
そこでこの記事では、仕事に役立つ『脳梗塞と脳血管性認知症』の症状と関わり方のコツについてまとめました。
この記事を読むことで、利用者さんの症状がよりくわしく理解でき、具体的な介護のポイントとコツを知ることで、より良いケアにつなげることができます。
ぜひ最後まで読んでください。
脳梗塞と脳血管性認知症の症状とは
脳梗塞は脳の一部に血が流れなくなることが原因の病気で、脳血管性認知症は脳梗塞や脳出血などの脳血管障害(脳卒中)によっておこる認知症のことを言います。
より良いケアを提供するためには、脳梗塞と脳血管性認知症について理解を深めることがポイントです。
次に、脳梗塞と脳血管性認知症についてそれぞれまとめました。
脳梗塞とは
脳梗塞の原因はラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳梗塞の3種類があります。
脳につながる血管がふさがり、脳の神経細胞に栄養や酸素が十分に供給されず、神経細胞が破壊されることで症状がおきます。
危険因子には、高血圧、不整脈(心房細動)、糖尿病、喫煙、肥満などがあり、生活習慣病を背景とするものが多いです。
典型的な症状は、片方の手足が動かなくなったりしびれる、顔の半分が動かなくなったりしびれる、ろれつが回らなかったりうまく言葉を発することができないという、「腕や足」「顔」「言葉」の症状です。[参考:脳血管障害・脳卒中 | e-ヘルスネット(厚生労働省)]
こうした症状が現れたら、すぐに治療を受けることで症状が軽症ですむこともあります。利用者さんの変化には敏感でいましょう。
脳血管性認知症とは
脳血管性認知症の原因は、脳梗塞・脳出血を含めた脳血管障害(脳卒中)です。
認知症全体の約20%をしめ、60~70代の男性に多く、女性と比較して男性が2倍多いという報告もあります。[参考:認知症施策の総合的な推進について(厚生労働省)]
脳血管障害が再発することで症状は段階的に進み、損傷の大きさにより急激に進むこともあれば、逆に小さく徐々に進むこともあります。その他、合併症、転倒・骨折などの外傷が原因で症状が進むこともあります。
危険因子には、高血圧、脂質異常症、糖尿病、虚血性心疾患、生活習慣(飲酒、喫煙、運動不足、食事、肥満など)があります。
治療は脳血管障害の再発予防が効果的です。そのため血圧コントロール、糖尿病、脂質異常症などの治療、生活習慣病の治療、薬の管理が重要となります。
脳血管性認知症の症状とケアのポイント
症状は脳血管障害の部位と、それにともなう認知症の症状によりさまざまです。本人のできること・できないことを理解し、基本的な生活習慣と、人との関わりや趣味活動など、生活の質を高めるケアが必要です。
初期には認知症の自覚症状があることが多いです。そのため、できないことを責めない、本人のしんどさを理解することが大切なポイントになります。
1日の中でも症状に差がある
その日の中でも、ついさっきできたことが、今はできないことがよくあり「まだら認知症」とも呼ばれます。
怠けているのではないか?と誤解を受けることがありますが、決してそんなことはありません。
歩行障害
小刻みに歩く、ひどいガニ股で歩く、とつぜん膝折れをするなどの歩行障害があります。
転倒リスクが高くなるため、歩行介助や転倒予防のための環境調整が必要です。
センサーマットをおく、足拭きマットや小さい段差などのつまずくものをのける、夜は足元が見えるようにライトをつけるなど、転倒しにくい環境作りをしましょう。
意欲低下
本人の自覚症状があることが多いため、落ち込むこともよくあります。
まずは本人を理解した声かけをしましょう。
寝たきりにならないよう、基本的な生活習慣を確保するかかわりも重要です。レクリエーションやリハビリへの参加も効果的です。
遂行機能障害
ものごとを計画し、スムーズに行うことが難しくなります。
混乱することでさらに症状が悪化するので、本人の目的が何かを理解し、できないところをサポートすることがポイントです。
失語症
言いたいことが言えない(運動性失語)、言い間違いが多い・相手の言っていることが理解できない(感覚性失語)などのコミュニケーションが難しくなります。
「おはよう」「いただきます」「ありがとう」などの簡単な挨拶から始めると良いでしょう。
コミュニケーションは、必ず声を出す必要はありません。伝えたいことを書いてあるカードを使うことも有効です。
嚥下障害
食べ物を理解して口まで運ぶ、きちんと噛んで飲み込むことが難しくなります。そのため、栄養低下や誤嚥による合併症のリスクもあります。
飲み込みやすくするために、ソフト食やペースト食に変更するなどの食事形態の変更や、スプーンのサイズを小さして一度に食べすぎないようにするなど工夫しましょう。
口の中に食べ残しが多いこともよくあるので、口腔ケアをしっかりと行いましょう。
記憶障害
必要なことを覚え、思いだすことが難しくなります。
必要なことを覚える代用品としてメモを使うこと、介護者が代わりに覚えておき、さりげなく伝えてサポートをするなどしましょう。
感情失禁
感情のコントロールがうまくできなくなる障害です。
とつぜん怒り出したり、必要以上に笑うことや泣くことがあります。症状が現れても焦らず、冷静に対応するようにしましょう。相手を理解して、介助者も感情的に対応をしないことがポイントです。
落ちつくまで待つことや、興奮している場合は本人の身体の安全に気をつけ、物理的な距離をとることもあります。
落ちついている時に本人の話を傾聴するなど、ふだんから良い関係性を作っておくようにしましょう。
上下肢の麻痺
身体の半身に麻痺がある状態です。脳の損傷の大きさにより重症度が変わります。
麻痺の状態に合わせて必要以上のケアは避けた方が良いですが、症状に差があることも特徴ですので、見極めることがポイントです。
麻痺があるにも関わらず、以前のように動こうとすることもあるので注意が必要です。
リハビリからのアドバイスを聞き、必要な介助方法や環境調整を教えてもらうこともおすすめします。
まとめ
今回は脳梗塞と脳血管性認知症の症状について、ケアのポイントとコツを解説しました。
生活介護が必要な方の中には、脳血管障害と認知症の症状を持つ方が多くいます。脳の損傷部位により症状に違いが多いため理解しにくく、ケアの方法に悩むことも多いと思います。
この記事をきっかけに症状の理解と介護のポイントを知り、利用者さんの生活の質(QOL)向上につながると幸いです。
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