認知症予防について知ろう!介護現場でもできる予防対策とは?具体例を解説

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日々の業務では、毎日同じことを繰り返し、刺激の少ない生活をおくる利用者さんが多いです。その中で、ひょっとして認知症の症状かな?と感じることや、このままでは本当に認知症になるだろうな、と思うこともよくあります。

私は医療現場に15年間勤めており、多くの認知症リスクの高い方、すでに認知症の症状が見られ始めた方と関わってきました。利用者さんの生活に、少しでも変化を取り入れることの大切さを感じています。

そこでこの記事では、「認知症予防の基礎知識、具体的にできること」をまとめて解説します。

この記事を読むことで、認知症の発症リスクを下げることができ、介護予防につながります。ぜひ最後まで読んでください。

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介護士が知っておくべき認知症予防

認知症を発症すると、日常生活をおくることが難しくなり、社会とのつながりも減り、さらに認知症がすすむ悪循環になることが知られています。

厚生労働省の認知症施策では、2025年には認知症の有病率は700万人に及ぶことが予測されており、認知症予防は国をあげて対応する課題になっています。

[参考:認知症施策の総合的な推進について(参考資料)ー厚生労働省老健局

認知症は現代医学では完治が難しく、これをすることで確実に予防できるというものもありません。理由は、認知症の要因は人によりさまざまであるためです。

今の考え方としては、認知症になることを遅らせる、認知症になっても進行を緩やかにすることが重要とされています。

[参考:知っておきたい認知症の基本ー政府広報オンライン

認知症の要因は人さまざま

認知症は、脳の細胞が壊れることで周囲で起こっている現実を正しく認識できなくなり、日常生活や、周囲の人たちとの交流が難しくなる状態です。

要因はいくつも絡み合っています。高血圧・脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病や、うつ傾向、頭部外傷、対人交流の減少など、個人の性格や住む環境などが関係します。

要因はさまざまですが、認知症のリスクを軽減するために効果的なものもいくつもあります。その中で多く共通する項目としては、生活習慣病を改善すること、栄養、運動習慣、社会へ積極的に参加して人との関わりを持つことがあります。

最近では、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)、サルコペニア、フレイルなど、心身の機能が低下することで認知症のリスクが高くなることが知られてきました。

認知症の予防には「フレイル」を知ること!

フレイルとは、健康な状態と要介護状態の中間の段階で、生活の質や1日の活動量が減り、認知症の要因となることが知られています。

フレイルは身体的フレイル、精神・心理的フレイル、社会的フレイルにわかれています。3つのどの柱が倒れても、ドミノ倒しのように崩れて連鎖することで自立度の低下がすすみます。

個人の経験からも、3つのフレイルがお互いに関係していることはよく感じます。活動量が減ることで認知症の症状が早く進行することは間違いないと思います。

身体的フレイル

身体的フレイルとは、筋力が衰えたり、関節や脊椎の病気などの運動器の障がいで移動機能が低下し、自覚症状をともなう状態を言います。

精神・心理的フレイル

精神・心理的フレイルとは、定年退職やパートナーを失うことで引き起こされるうつ状態、軽度の認知症の状態などを言います。

社会的フレイル 

社会的フレイルとは、加齢にともなって社会とのつながりが減ることで生じる、独居や経済的困窮の状態を言います。家族や友人・知人との交流機会が減少するなど、社会的に虚弱な状態にある場合です。

フレイル予防のキーワードは栄養・身体活動・社会参加

フレイルの予防には、栄養・身体活動・社会参加の3つがポイントです。バランスの取れた食事、歩くことや軽い筋トレなどの適度な運動、就労やボランティアなどの社会参加をすることを言います。

認知症を発症する前は自分ごととして考えにくいものです。3つのポイントのどこから崩れてもそれぞれに影響するため、負の連鎖が起こらないようにサポートをする必要があります。

認知症予防の簡単トレーニング

フレイル予防、認知機能の低下を遅らせる方法はさまざまなものがあります。年齢を重ねると、新しいものを受け入れ難くなることが多いため、本人の生活習慣になることを探すと良いでしょう。

具体例の中からヒントになるものがあれば、ぜひ取り組んでみてください。

ながら運動(デュアルタスク)

同時に2つの課題を行うことで前頭葉を刺激し遂行機能を鍛えます。

洗濯物を畳みながら歌を歌う。テレビを見ながら話しをする。ラジオを聴きながら塗り絵をする。日々の生活の中で2つのことを同時に取り組んでみるなどがあげられます。

施設で取り入れる場合は、職員と一緒に洗濯物をたたみながら歌う、職員が間で入りながらテレビを見つつ話をするなどがおすすめです。

テレビゲーム

ゲームをすることで、記憶、運動機能、注意機能、思考、反射神経など幅広く鍛えます。注意機能、反射神経を鍛えることで転倒予防にもつながります。

ゲームにはルールを覚える必要があり、勝ち負けもあれば、協力してクリアすることもあります。種類も多く、本人に合わせて選ぶこともできます。

子供にとってゲームは刺激が強く、時には生活に支障が出る場合もありますが、高齢者にとっては強い刺激の方が活動性が上がる要素になることがあります。

最近ではゲームは幅広い世代に認知され、自治体主催の介護予防にも取り入れられるなど、今後も増えることが予想されます。タブレットでできる簡単なゲームを取り入れる施設もありますので、試してみる価値はあります。

囲碁・将棋・オセロ・五目並べなど

対戦相手を観察し、数手先を読むことで記憶力、思考力、想像力を鍛えます。また、同じ施設内の方とコミュニケーションをとることで孤独感も軽減できます。

昔からある遊びであり、女性よりも男性で受け入れやすい印象です。

男性は比較的コミュニケーションが苦手な方もいるので、馴染みの存在ができることで安心し、認知症の症状が軽減することもよく見ます。

囲碁や将棋のルールを忘れている場合は、五目並べをすると良いでしょう。職員と一戦交えるのもおすすめです。

脳トレ

指先を動かすことで脳を刺激し、記憶、注意、判断力、思考力、想像力などを鍛えます。

文字を書く、簡単な計算プリント、塗り絵、ナンプレやクロスワードなど、机の上でもできる作業です。制限時間などのルールを設けることで、難易度を調整することもできます。

最近は脳トレの言葉をよく聞くようになったので、高齢の方も受け入れてくれることが多くなりました。

書店に専用のコーナーもあり、手に入れやすいので試してみるのも良いでしょう。

指体操

指は第二の脳と呼ばれるほど脳の活性化につながる部位と言われています。

指体操は手順を覚えたり、手の位置を意識する必要があり、記憶や身体の位置関係、運動をつかさどる脳を鍛えます。

いつでもどこでもできて負担が少ないため、80代や90代の方でも取り組むことができます。また、指体操にはさまざまな種類があり、インターネットに多くの方法が紹介されています。

道具の準備も要らず取り入れやすいため、食事前に行うなど生活習慣に取り入れてみるのもおすすめです。

楽器演奏

音楽を聴くことで聴覚を刺激する、指を使い手順を覚える、タイミングを図るなどさまざまな要素を含んでいます。コミュニケーションにもつながり、心理的な安定にも効果的です。

手を叩きながら歌を歌う、太鼓や鈴などで音楽に合わせて鳴らすなど、イベントに取り入れることもおすすめです。

料理

食事は生活習慣病予防につながります。一緒に料理をする、一緒に食べる、人に食べてもらうなど、人とのつながりや役割にもなり、心理的な安定に効果的です。

女性には特に受け入れられやすい活動である印象です。

調理することは「ながら運動」の要素を含んでおり、買い物で歩くことにより有酸素運動にもなります。

散歩

筋力低下の予防、有酸素運動にもなり生活習慣病の予防につながります。会話のきっかけになることで社会参加にも効果的です。

行うときは本人の移動能力に合わせて杖や歩行器を使いましょう。車椅子の人は、途中で立たせて遠くを見てみることも良い刺激になります。

高齢になると感覚機能の低下が進み、外の刺激を感じにくくなります。「暑いですね」「風が気持ちいいですね」「空が青いですね」など声をかけながら、見る・聞く・触れる機会を増やすことも良い刺激になります。

地域の予防事業を活用する

認知症予防の講座、体操教室を行う自治体も増えています。「介護予防・日常生活支援総合事業」の「一般介護事業」に位置付けられ、65歳以上の方は参加できます。

国や自治体が主催の講座や事業は、比較的費用がかからず、質の高いものが多いです。社会参加でき、他人とコミュニケーションをとることにもなるので、家族や知人にすすめてみるのも良いでしょう。

掃除、断捨離

認知機能が低下してくると清潔に関する意識も低下する傾向にあります。日頃から意識して掃除をすることで、身の回りの清潔に対する意識を保つことにつながります。

運動にもなり、注意機能改善や落ちているものにつまずくことを防ぎ転倒予防にもなります。

必要なもの、不要なものを選ぶことで、思考し判断する力も鍛えます。

家事の役割を持つことや、気持ちもスッキリしますので、心身の安定にも効果的です。

まとめ

今回、認知症予防のための基礎知識、現場でもできる具体的例を書きました。日々の業務では時間に追われることも多いと思います。そのため、具体例では比較的取り入れやすいものをあげました。

料理などは準備に手間もかかると思いますが、イベントで行ってみることや、リハビリや管理栄養士などの他職種に協力してもらうのも良いでしょう。囲碁や将棋などは、利用者さん同士でできるかもしれません。

今回の記事を参考に、利用者さんの生活の質(QOL)の向上のために、少しでも取り入れていただけると幸いです。

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